カナダで事業用操縦士免許取得のための時間付けと計器飛行証明、多発機限定(Multi IFR)の免許をとり日本に帰国しました。
ここまでで取得したのはカナダの免許です。これから航空会社の入社試験を受けるために必要な日本の航空局(JCAB)が発行する免許を取るためにさらに日本で訓練をする必要があります。
事業用操縦士免許、計器飛行証明、定期運送用操縦士免許は大人の事情で海外の免許が簡単に書き換えできないことになっているので日本で訓練をして免許をとらないといけないんです。
覚えている範囲で免許を取った時のことを書こうと思います。
これから免許を取る方はぜひ最新の情報を航空局、フライトスクールで確認してください。
前回までの話↓↓:
長崎へ
カナダへ渡航前に決めていたフライトスクールに入学するために長崎へと出発します。
またまた新しい旅立ち(`・ω・´)
どきどきワクワクです。
車に荷物を満載して実家のある関西からフェリーで福岡へ。
そこからさらに車で数時間走り長崎に到着します。
フライトスクールは長崎空港に隣接しています。
学校へ寄り挨拶し、これから住む寮へ案内してもらいます。
寮は学校が周辺の一軒家をあちこちに借りていてそこに生徒を住まわせる形になっていました。
僕の寮は結構古そうな二階建て一軒家。自分を入れて4人でシェアします。それぞれ一人一部屋。キッチン、バス・トイレは一個しかないので共同で使います。
あまりお金なかったので自炊したり安いお惣菜買ってきて食べたりしてました。
同居人は同期が2人と先輩が1人。
フライトスクールに来ている生徒は様々な年代の人たちがいました。正確にはわかりませんが当時学校には50人くらいは生徒がいたかと思います。そのうち同期訓練生は10人余り。
僕と同じように学校を卒業してから社会人(僕が社会人と呼べる代物だったかはさておき)を経験し海外で免許を取り日本でエアラインパイロットに挑戦しようとする人たちです。
訓練始まる
いよいよ訓練がはじまりました。
そして担当の教官も決まりました。見た目はちょっと気難しそうな年配の教官です(見た目は気難しそうでしたがとても丁寧に教えていただきました)。担当教官がメインで訓練し時々違う教官にも見てもらう形になっていました。
同期訓練生は数人づつのグループにわかれて担当教官の元で訓練をします。
同期や同じグループの仲間とは共同で勉強します。勉強量、情報量が多いので共同作業がかなり重要になってきます。仲が悪い期の訓練生はやはり訓練や試験もうまくいっていないことが多かったです。幸い僕の期はみんな最後までとても仲良かったのでうまく進んだと思います。もしこれからフライトスクールで免許を取りたい、または航空会社で訓練を始める方がいたら訓練仲間とは仲良くしましょう。進み方も変わってきます。エアラインの訓練では2人でペアになり訓練終了までずっと一緒ということもあるのでとても重要です。
日本とカナダの違い
飛行機は基本的に世界中ほとんどが同じルールで飛んでいます。
ICAO(国際民間航空機関)という国連に世界の航空関連の基準を作る団体があり、日本を含むほとんどの国がこれに加盟しています。日本の航空法もICAOのルールをもとにして作られています。
なので海外から日本にやってくる飛行機もさほど戸惑うことなく飛ぶことができるんです。
ですが国や地域、空港などによっては特有のローカルルールがあります。
カナダと日本では空域の設定方法や免許取得時の訓練内容などが微妙に違っています。
またルールとは関係ないですが天気は地域ごとにかなり違います。
日本の中でも沖縄と北海道では天気は全く違うのと同じように日本とカナダやその他の国では季節ごとの天気の移り変わり雨や雪の量、風や雲の傾向も違います。
そんなわけで違いについては色々と勉強しないといけないことが多いんです。
その他にも違いは色々ありました、、、
訓練は制服で敬礼(`・ω・´)ゞ
訓練でどんなことをしたかとかはあまり印象に残っていないのですが何が印象に残っているかと聞かれれば一番は訓練で飛行機に乗り込む前に一列に並んで教官に向かって敬礼をすることですね(`・ω・´)ゞ
制服を着て黒いネクタイをして帽子(野球帽みたいなのにフライトスクールのロゴがはいったやつ)もかぶっています。
初めて先輩がやっているのを窓から見た時は軽いカルチャーショックでした。
まぁしゃきっとした気分になるのでいいですね。すぐに慣れました。郷に入っては郷に従えってのもありますしね。
カナダやアメリカでの訓練ではラフな格好で自動車教習所に通う感じで行ってました。若い人からお年寄りまで飛行機の免許を取りにきていたので飛行機が日本よりもっと身近な感じなんだと思います。
日本では飛行機はなにかまだまだ特別な乗り物なんだと思います。操縦するとなるとさらにそんな感じなのかもしれません。
操縦自体は誰でもできるものなので日本でも小型飛行機の操縦がもっと身近になればいいなぁなんて思います。
英語と日本語
話が軽く横道にそれそうになりましたが他にカナダと日本での違いというと当然ですが言葉です。
ATC(パイロットと管制官がコミュニケーションに使う無線)は基本的に英語を世界共通で使うことになっています。
ですが日本とカナダでは英語のアクセントや速さが全く違います。最初は戸惑いましたがこれも日本人同士なので飛び始めてしばらくするとすぐに慣れました。
ATCに加えて訓練や学科試験などで使うテキストはこれも当然ですが日本語です。
カナダで最初に自家用免許を取る時は難しい英語を必死に覚えたのですが今度は英語で覚えたものをまた日本語に変換しないといけません。
例えば、、、
飛行機の尾翼についてる上昇したり降下したりするときに動かす部分があるんですが英語では「evevator」といいますが日本語では「昇降舵」といいます。また、機内についてる飛行機の姿勢がどうなっているか見ることができる計器に「attitude indicator」というのがあるんですが日本語では「姿勢指示器」といいます。「vertical speed indicator」は「昇降計」、「aileron」は「補助翼」、「flap」は「高揚力装置」などなど。英語をカタカナ表記してくれているテキストもありますが漢字多い、、、、(ーー;)これも最初の頃少し戸惑いました。
訓練費用が異常に高いΣ(゚д゚lll)
これは大きいです。あまりにも高額なので訓練費を抑えるためにほとんどの人ができる部分は海外でやっています。
当時僕が行ったフライトスクールで事業用操縦士免許を取る場合は1時間5万円ほど。計器飛行証明では双発機を使い1時間10万円ほどでしたΣ(゚д゚lll)そのほか試験費用や生活費を入れると1000万近くかかってしまいました(もちろんそんなお金ないので借金です)。
カナダやアメリカでは当時の訓練費用は単発機(セスナ172やパイパーチェロキーなど)では1時間8000円~15000円くらい。双発機(パイパーセネカなど)なら1時間2万~3万円くらいでした。日本に比べるとかなり安いですね。
日本では飛行機の維持費などが海外より高いんだと思いますがこの価格設定では普通にふらっと来てレンタルすることもできないですね。
1時間で10万円、2時間乗れば20万円です。30分でも5万円です(゚Д゚;)
訓練中は時々管制官から込み合っていて地上で待機するように言われることがあります。出発して帰ってくるまでは常時課金システムです( ゚Д゚)数分待たされるだけで数千円のお金が消えていくわけです。恐ろしいですね。
待たされる時は心の中ではいつも
「あ~たのむ~早くしてくれ~( ;∀;)」
と祈るような気持でした。
無駄遣いではないですが後にも先にも人生でこんなに短時間でこんなにお金を使ったことはありません。。。。
教官が怒鳴る(*_*)
これもカナダでの訓練と大きく違う所ですが、教官訓練中、怒鳴ります。
カナダではいつもわりと楽しく訓練やっていたので考えられないですが、、、
もちろん四六時中ってわけでないですがなにかミスしたときや問題に答えられなかったときに怒鳴ります。
「これは訓練なのでどんな時にも冷静でいられるために時には怒鳴ることも必要」
「怒鳴られるようなミスをするほうが悪い」
などという人もいるかもしれませんが僕はそうは思いません。
日本でも大小にかかわらず飛行機の事故が起きています。その中にはパイロットが原因のものもあります。
その事故を起こしたパイロットも訓練生時代おそらく伝統の日本式怒鳴って育てる教官にも教わったことでしょう。つまりはミスをするかしないか、どんな時も冷静でいられるか、事故を起こすか起こさないかなどは怒鳴られて学ぶこととはほぼ関係ないってことだと思います。
残念なお知らせですがこのスパルタ式訓練スタイルはエアラインに入っても続きます。どこの航空会社にも数名は怒鳴る教官がいるようです。僕は日本では航空会社2社で働きましたがどっちにもいました。他の航空会社の知り合いに聞いてもやはり数人はいるようでした。残念なことに航空局の試験官にもいるんです試験中に受験生に怒鳴る人が、、、
最近の訓練のことはよく知りませんが怒鳴るスタイルの訓練はなくなってればいいなと思います。その方が楽しく仕事できますからね。
ま、独特の世界なのでこれはこれで面白い経験でした。
マイクロソフトのフライトシミュレーターは計器飛行のイメージトレーニングに使っていました
事業用操縦士・計器飛行証明の試験に合格
時々ミスしたり怒鳴られたりしながら、同期と助け合いもしながら順調に訓練は進んでいきました。
訓練は実技試験でやる科目をひとつひとつ試験の基準内に入るようになるまで訓練します。もしうまくいかなければ何度もやります。
訓練科目はカナダで自家用免許、計器飛行、多発限定でやったものとだいたい同じです。(一部違うところもあります)
試験の合格基準などは航空局が監修し鳳文書林が発行している操縦士実地試験実施基準 操縦士実地試験実施細則に詳しく書かれているので興味のある方、これから受験する方は読んでみるといいかと思います。
航空局のサイトにも詳細があります。
参照航空局HP: 操縦士実地試験実施細則 事業用操縦士
参照航空局HP:操縦士実地試験実施細則 計器飛行証明
入学から約半年後に事業用、そのまた半年後に計器飛行証明の実技試験に合格しました。
試験に落ちると再訓練と再試験でへたをすると数十万単位の追加料金となるので必死でした。
事業用も計器飛行もカナダでやらかしたような失敗もせず一回目で合格ですε-(´∀`*)ホッ
そして同期も全員が合格しました。
その後
約一年の長崎での訓練を終え航空会社の入社試験を受けることができる免許をとることができました。
ただ免許を持っているだけでは単に1000万以上の借金が残るだけなのでもちろん就職先を探さないといけません。
幸いにも数社の入社試験を受けそのうちの一社から合格をいただき日本の国内線を運航する会社に就職することができました。
いよいよジェット機に乗れる(*’▽’)
そんな浮かれた気持ちもどこへやら
入社後もエアラインの副操縦士になるにはまだまだ訓練は続きます、、、、あ~ながい~
航空会社での訓練もなかなかの経験でした。
また続きはいつか書きたいと思います。
ありがとうございました。