2021年6月4日に国産バイオジェット燃料搭載としては初となるフライトが国土交通省航空局保有のセスナサイテーションCJ4を使用して行われました。参照:2021.6.4株式会社ユーグレナニュースリリース
続いて2021年6月29日には個人所有の民間航空機ホンダジェットでも同様のフライトが行われ成功しました。参照:2021.6.29株式会社ユーグレナニュースリリース
2022.3.16 株式会社フジドリームエアラインズ(FDA)の旅客機エンブラエルE175にユーグレナのバイオジェット燃料(SAF)「サステオ」を使用し、富士山静岡空港~県営名古屋空港(小牧)間でチャーター運航を実施ししました。参照:定期旅客運送を行うエアライン初のユーグレナ社のバイオジェット燃料「サステオ」を使用したチャーター運航について | 株式会社ユーグレナ (euglena.jp) 2022.3.17update
世界的な脱炭素、再生可能エネルギー使用への大きな流れの中で航空機の使用燃料はバイオ燃料に全て変わっていくのでしょうか。
バイオジェット燃料の現状と可能性、課題を解説します。
バイオジェット燃料とは
今回のフライトで使用されたバイオジェット燃料は食用廃油と微細藻類(ミドリムシ)由来の油脂の混合されたものが使用されました。
バイオジェット燃料とは主に微細藻類(ミドリムシなどの植物プランクトン)や木材チップ、製材廃材などを利用したバイオマスを原料にして作られたジェット機に搭載できる燃料のことをいいます。参照:資源エネルギーHP
ミドリムシ??(; ・`д・´)
なぜバイオジェット燃料を使用するのか
空を飛ぶ飛行機の燃料になんでそんなわけのわからないミドリムシやら食用廃油やらを使うのでしょうか?
「危ないんじゃないか?」
「ミドリムシとか気持ち悪い」
「そんなもの現実的じゃない無理に決まってる」
「そもそも二酸化炭素増加と地球温暖化は関係ないので無意味」
などなどいろんな声が聞こえてきそうですが、、、
なぜそんなわけのわからない物を原料にしたバイオジェット燃料を使うのかというと、、、
バイオジェット燃料を使うと今まで使っていたジェット燃料よりも排出する二酸化炭素の量を減らすことができるからです。
脱炭素、再生可能エネルギーを使用して少しでも地球温暖化を遅らせようと多くの国や企業が努力している活動の一環ですね。
航空業界に関して言うとICAO(国際民間航空機関)とIATA(国際航空運送協会)がそれぞれ目標を掲げています。
ICAOは「毎年2%づつ燃費効率を改善する」、「2020年以降CO2の総排出量を増やさない」という目標を掲げています。参照:国土交通省航空局資料
IATAは「2050年に2005年比(4億トン)で50%CO2削減」を目標としています。参照:NEDO資料
再生可能エネルギーと地球温暖化防止対策についてはこちらの記事で解説しています↓↓
ただ、バイオジェット燃料は使用することで直接的に二酸化炭素を排出を削減できるのかというとそういうわけではないようです。バイオジェット燃料を使ったジェット機も普通に排気ガスを吐き出します。
「じゃ意味ないじゃん」となりそうですが、、
バイオジェット燃料を生産する段階(微細藻類や木材の生産)で多くの酸素を地球上に排出するので結果的に実質プラスマイナスゼロになります。
この方法でこれ以上排出される二酸化炭素を増やさないでおこうという考え方が再生可能エネルギーとしてのバイオジェット燃料の基礎となっています。
「だったらそんなことするよりクルマみたいに電動にすればいいのに」って意見もあるかと思います。
しかし残念ながら飛行機には電気で動く電動飛行機にできない理由があります。大きな飛行機に関しては今後少なくとも30年くらいは電動化できないだろうと言われています(数人から数十人程度が乗れる小型の電動飛行機については近い将来実用化されます)。
大型飛行機を電動にできない理由はこちらの記事で解説しています↓↓
新型コロナが明けたらハワイとかモルジブとかパリとかロンドンとか飛行機を使っていっぱい海外旅行に行きたい!!
でも二酸化炭素は増やしたくないし地球温暖化には貢献したくない!
未来の地球をいい環境で残したい!
孫の孫の孫に恨まれたくない!
そんな感じでバイオジェット燃料の開発が進められ使用されることになったというわけです。
バイオジェット燃料の安全性は?
普段私たちが乗っている旅客機の燃料は「JET A-1」というタイプのジェット燃料が使用されています。
ジェット燃料は上空1万メートルのマイナス50℃でも凍ることなく高い出力をエンジンに供給する必要があります。
なので厳しい条件に合格しなければジェット燃料として使うことはできません。
その代表的な規格がASTM(American Society for Testing Materials)のD1655と呼ばれる規格です。
今回使用されたユーグレナのバイオ燃料はASTM D7566と呼ばれるD1655と同等の基準を満たしたものになっているので安全性に問題はないと言えます。
バイオジェット燃料の現状
バイオジェット燃料の使用実績と生産の現状をご紹介します。
バイオジェット燃料の使用実績
日本で国産のバイオジェット燃料を使用してのフライトは今回(2021年6月4日)が初めてだったわけですが、海外で生産されたバイオジェット燃料はすでに多くの国で試験飛行のみならず商用での使用実績が数多くあります。
海外での生産の現状
世界各地ですでに大量に生産され実際に使用されているようです。
今後の可能性は?市場規模は?
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試算によれば2030年の世界でのバイオジェット燃料の市場規模は4兆円、2050年には19兆円になるだろうとのことです。参照:NEDO資料
また経済産業省は2030年時点の国内航空会社(国際線)だけでもその市場規模は1900億円になると予測しています。参照:経済産業省2050年カーボンニュートラルにともなう成長戦略資料
2050年には2005年比でCO2排出を半分にしようってことなのでざっくり今の半分はバイオジェット燃料に替えることになります。
これはものすごい量になることは間違いなさそうです(`・ω・´)
バイオジェット燃料の課題は?
バイオジェット燃料の課題は何と言ってもその製造コストです。
今回使用されたユーグレナのバイオジェット燃料の製造コストは1リットルあたり1万円と言われています。
1リットル1万円!!!
高すぎる!!
さすがにこれでは高すぎて誰もが使える燃料にはなりません。
ユーグレナによればこの問題は商業プラントを拡大することで製造コストを1リットルあたり数十円代にまで下げることが可能とのことです。フィンランドのネステ社ではすでにこの方法でコスト削減に成功しているようです。参照:Business insider 2021.6.23記事
ジェット燃料としての安全性も保障され完成したわけですからあとはどこまで効率よく大量生産できるかにかかっているようですね。将来的には他の企業も参入して適正な価格競争も進めばさらに普及しさらに使いやすいものになるかもしれませんね。
まとめ
二酸化炭素排出を減らして地球温暖化をできるだけ遅らせるにはありとあらゆる手段が必要です。バイオジェット燃料もそのうちの一つです。すでに技術は確立されつつあるので太平洋の小島が海に沈んでしまう前に世界的なカーボンニュートラルが少しでも早く実現するといいなと思います。そして飛行機を使うことが「飛び恥」なんて言われなくなり気兼ねなく飛び回れる日が来たらいいですね。
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