真冬の寒い日、凍っているまたは雪が積もって滑りやすい誘導路(taxiway)、滑走路(runway)を飛行機が地上走行(taxi)する時、パイロットはどうやって操縦しているんでしょうか?冬用タイヤはあるの?
ここでは冬の滑りやすい道路を走る飛行機特有の走行方法と使っているタイヤについてご紹介します。
飛行機のタイヤ 冬タイヤはどんなものを使っている?
飛行機(旅客機)のタイヤは冬も夏も同じものをはいています。
非常に重たい機体、高速走行、着陸のショック、10000m上空での超低温にも耐えられるように飛行機のタイヤは構造上状とても丈夫にできています。
例)ボーイングB777のタイヤは一本につき約30トンもの荷重に耐えることができます。また着陸した時の地面との摩擦で250℃以上の高温~10000メートル上空の温度マイナス60℃(タイヤの格納庫には暖房はついていません)まで耐えることができます。
ですが地上での雪道にはとても弱いんです。タイヤは常に車で言う「ノーマルタイヤ」をはいていて4WDでもありません。
ラジアルタイヤと呼ばれる縦に溝がついたタイヤが冬の雪道(誘導路、滑走路)でも装着されています。
飛行機の駆動輪は?4WD?
旅客機にはたくさん車輪がついていますが駆動輪がありません。翼か機体についているエンジンの推力のみで進みエンジンとタイヤはつなっがていません。自動車の場合、エンジンからの駆動力は前輪駆動車(FF車)なら左右両側の前輪へ、後輪駆動(FR・RR車)なら後輪へ、4輪駆動車(4WD)ならすべての車輪へ直接伝わります。最近の車にはトラクションコントロールが付いていて駆動輪のトルクをコンピューターでコントロールしスリップ(空転)を防ぐこともできますが飛行機には駆動輪がないのでそれらはついていません。ゼロWDです。
旅客機は操縦席についているスラストレバー、スロットルレバー(赤丸)を前後に動かすことで前進する推力をコントロールします。車のアクセルにあたります。左右の翼に一個づつエンジンがついている場合は右レバーが右エンジン、左レバーが左エンジンの推力を調節します。
スロットルレバーをたくさん前に出せばその分ジェットエンジンやプロペラの出力が上がりエンジンの後ろ側へ沢山空気を送ることで機体を前へ進めます。これは上空でも地上でも同じです。
飛行機のブレーキ
もちろん旅客機にもブレーキはついています。翼の下にある車輪(メインギア)にはブレーキがついています。操縦席の足元にあるペダルの上部(赤矢印)を踏むとブレーキがかかります。
右足のペダルを踏むと右車輪のブレーキ、左のペダルを踏むと左車輪のブレーキがかかります。
旅客機のブレーキは一般的にコンピューターでメインギアへつながる油圧を制御して行われます。強く踏めば急ブレーキ、ゆっくり踏めばゆっくりと減速します。同じものが左右の座席についています。
自動車にはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が装備されていますが旅客機にもアンチ・スキッド(antiskid)システムとよばれる同様の装備があります。メインギアについているセンサーでスリップを検知するとブレーキの圧力をコントロールすることができます。
ですが車と違うところは車はブレーキを踏むと左右両方のブレーキがかかりますが、飛行機が誘導路や滑走路を地上走行中は右のブレーキは右足、左のブレーキは左足で独立してパイロットがコントロールしています。各々にアンチスキッドがついていても右を強く踏みすぎると飛行機は右側へ、左を強く踏み過ぎると左へと進みます。
ノーズギア(前輪)にブレーキはついていません。
水上飛行機の免許を取る方法↓
雪道のハンドル操作は?
車で言うハンドルは旅客機の場合は操縦席の左右にステアリングハンドル(赤矢印)がついています。左席に座るパイロットは左手で、右のパイロットは右手でコントロールします。このハンドルを右に回すと飛行機のノーズギア(前輪)が右へ曲がります。
また足のペダル下部(青矢印)を踏むことでもノーズギアを左右に動かすことができます。
ちなみに正面についてるハンドル(コントロールコラム)はいくら回しても地上で飛行機は右にも左にも行きません(×印)。
※コントロールコラムは主に上空で飛んでいるときに使用します。左へ回すと飛行機が左へ、右に回すと右へ、引っ張ると機体は上へ向き、押すと機体は下へ向きます。
マイルの有効期限は無期限!【MileagePlus JCBカード】飛行機の雪道運転方法は?
雪道ではとにかくゆっくり。
これは基本自動車の運転と同じです。
違うところは誘導路や滑走路に雪が積もっても凍っていてもノーマルタイヤでゼロWDというところです。チェーン規制もありません。
ですので滑らないようにとてもゆっくり進みとてもゆっくり止まります。誘導路(taxiway)に雪道速度制限はありませんが航空会社ごとに雪道でのスピード制限が決められています。通常は時速50キロくらいで走っている誘導路も雪や凍った路面で滑りやすい時は時速10~30キロくらいに落として走っています。
滑って路肩にはみ出したり吹き溜まりに突っ込んで動けなくなってもバックしたり他の飛行機に引っ張てもらったりJAFを呼ぶこともできません。動けなくなってしまったら基本はトーイングカーという飛行機を引っ張る専用車を呼んで引っ張ってもらい脱出します。作業には時間がかかり動けなくなった場所によっては空港閉鎖、誘導路閉鎖になり空の便は大混乱になってしまいます。
まとめ
飛行機は雪道を機敏に走ったり止まったりするように設計されていません。スタッドレスタイヤも4WDもありません。上空では高速で飛んでいますが雪道走行はとてもゆっくりです。夏用タイヤをはいたスポーツカーで雪でつるつるになった高速道路を走るような感じです。
もしも動けなくなると乗っているお客さんだけではなく空港が閉鎖になり外国からやってくる飛行機、日本の他の都市からやってくる飛行機が着陸できなくなってしまうかもしれません。なのでアクセルもブレーキもとてもゆっくり慎重にやっています。
今度雪の日に飛行機に乗ることがあって地上でのろのろと走っていたらちょっとこんなことを思い出してみるのも面白いかもしれませんね。